仙台高等裁判所 昭和30年(ラ)30号 決定 1961年7月29日
抗告人 六沢啓治
相手方 鳥村勇吉
主文
本件抗告を棄却する。
山形地方裁判所昭和三四年(モ)第三五六号強制執行停止決定の取り消しを求める部分を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
抗告代理人の抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。
抗告人の本件執行方法に関する異議申立が理由なく、その強制執行続行命令申請も抗告人に申立権がなく不適法であることは原決定説示のとおりであつて、当裁判所の判断もこれと異ならないから、原決定理由をここに引用する。
しかして抗告人は本件抗告で山形地方裁判所昭和三四年(モ)第三五六号強制執行停止決定の取消しを求めているが、従来民事訴訟法第五四七条第二項に基づく仮の処分に対して、同法第五五八条の即時抗告が許されるか否かについては、判例は積極消極の二途に分れて未だに統一を見ないところであるが、仮にそれが許されるとしても、右強制執行停止決定が昭和三四年一二月二三日抗告人に送達されたこと、本件抗告が昭和三六年二月二四日申し立てられたことは記録上明らかであるから、本件抗告中右強制執行停止決定の取り消しを求める部分は、期間経過後に申し立てられた不適法のものというのほかはない。なお、右抗告部分は、つぎの理由によつても不適法である。すなわち、抗告人は、右強制執行停止決定は、山形地方裁判所昭和三四年(ワ)第二三〇号建物買取請求事件の判決言い渡しによつて当然失効したものとし、同庁昭和三二年(ワ)第一五〇号建物収去事件の執行力ある判決正本にもとづく同庁昭和三四年(モ)第一八一号建物収去代替執行決定による強制執行の続行を求めるため、山形地方裁判所に民事訴訟法第五四四条による異議の申し立てをしたものであり、本件即時抗告は、右異議申し立てについての決定に対してされたものである。このような即時抗告で、強制執行の続行を求めるほか、さらに裁判を求める事項を拡張して、強制執行行停止決定の取り消しを求めることは、許さないものと解するから、この点からするも、右抗告部分は不適法といわなければならない。
よつて、民事訴訟法第四一四条、第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 斎藤規矩三 佐藤幸太郎 新田圭一)
抗告の趣旨
原決定を取消す。
山形地方裁判所昭和三十四年(モ)第三五六号強制執行停止決定は之を取消す。
との裁判を求めます。
抗告の理由
一、抗告人の主張する処は要するに前記山形地方裁判所昭和三四年(モ)第三五六号の強制執行停止決定は民事訴訟法第五四七条第二項に基くものである。(この点原決定も之を認めている)
二、然る処其の本案裁判である山形地方裁判所昭和三四年(ワ)第二三〇号建物買取請求事件は被抗告人敗訴の判決が言渡された。(この点も原決定は之を認めている。)
三、然る限り前記の停止決定は民事訴訟法第五四七条の規定により之を取消すか、さもなくば其の本案判決に於て取消しの宣言を為すべきであつた。
四、処が原裁判所は其の手を尽くさないから抗告人として、已むなく民事訴訟法第五四七条の決定は「第一審判決に至るまでの時限的な効力しか持たぬもの」であるという最高裁の判例法に基いて原決定理由摘示の通り「執行方法に関する異議」の申立をしたのであつた。
五、右申立に対しても原裁判所は前記の通りの棄却の決定を為したのである。
右決定は正しく民事訴訟法第五四条の解釈を誤つたものと解する。依つて抗告人としては本然の姿に返すべく本抗告を申立する次第である。